不機嫌な君
…それから、何とか金崎部長の話しから違う話にすり替えが成功し、場の雰囲気は和やかになった。
…午後9時を少し回った頃。

「そろそろ俺達帰るわ。後はお二人でどうぞ」
すっかり仲良くなった私と悠斗さんを置いて、葉月さんと圭介さんは帰っていった。

「…もう、帰りたい?」
「…いえ、もう少しお話ししたいです…ダメ、ですか?」

それは素直に思った事だった。
悠斗さんは話題が豊富だ。話しててちっとも飽きない。

「そ?・・・じゃあ、もう一軒行きますか?帰りは送るからさ」
そう言って微笑む。

「はい」
私も笑顔で頷いた。

…言い忘れていた。
私はそんなにお酒には強くない。
さっきの店でも、アルコールとノンアルコールを交互に飲んでいたと言うのに。

二軒目のお店で、それをする事をすっかり忘れていた。

「…大丈夫?」
心配そうに問いかける悠斗さん。

「…はい・・・大丈夫、れす」
そう言って微笑む私。…ろれつが回っていない。

それを見聞きした悠斗さんは、クスッと笑う。
「ホント、島谷さんは面白いね。一緒にいると楽しいよ」
「・・・そう、れすか~?」

ニコニコしながら言い返していたが、次第に睡魔が襲ってきた。

「ダメだな、寝ちゃう前に、家まで送るよ」
「へへ、お願いしま~す」

タクシーを待つこと数分。
やっとタクシーがつかまった。
…が、時すでに遅し。

…私は眠気に勝てず、夢の中。
…フワフワと、中に浮かぶ感覚が、何とも心地よかった。
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