不機嫌な君
私の反論に、溜息をついた金崎部長。ベッド脇にあるメガネに手を伸ばし、掛けようとした。
・・・が、私はそれを阻止した。

当然、金崎部長は怪訝な顔をする。
「何してんだ?」

「エ?だって、その方がカッコ良さが引き立つなぁ・・・と」
悪びれもなく答えてしまう。…だって、本当の事だし。

「…やっぱりバカだ、お前」
「・・・う」

そう言いながらも、私の意向に従ってくれたらしく、メガネはその場に置かれた。・・・ちょっと意外。

「…今から、昨晩の事話してやるから、耳の穴かっぽじってよ~く聞け」
「・・・は、はい」

その言い様に、生唾を呑み込む。

…少しずつ、昨晩の事を明らかにしていく。

二軒目の店で、相当酔っぱらった私。
それを送り届けようと、悠斗さんが私を連れ、タクシーを掴まえていた。
…しかし、その間に、限界が来ていた私は、寝てしまう。

その頃、金崎部長は、接待が終わり、店で呼んでもらったタクシーを待っていた。
タクシーが来て、乗り込もうとしたら、私たちが目に入った。

…どこからどう見ても、男がお持ち帰りする様に見えたようで。
放っておこうと思ったが、私が明らかに泥酔している事が分かり、渋々声をかけたとか。

案の定、相手の男は私の家を知らない。
自分は、私の上司だから、送り届けると言って、自分の待たせているタクシーに乗せ、私をアパートに連れ帰ってくれたそう。

…しかし、肝心の鍵が見つからない。あらゆるポケットの中も、カバンの中も探したが結局見つからず、仕方がないので、自分の家に連れ帰った。

ベッドに寝かせ、金崎部長はお風呂に入る。
ソファーで寝ようと、もう一枚ある布団を取りに来たら、酔った私に掴まれ離してもらえず、仕方なく、同じベッドで眠った。

「…でもなんで、私下着姿なんですか?」
「…お前が勝手に脱いでた。俺は知らない」

という事だったらしい。

・・・最悪だ私。
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