不機嫌な君
ガチャッ!バタン!!
勢いよく開いた資料室のドア。私を中に押し込み、勢いよくドアは閉められた。

「・・・何してるんですか?」
俯いたまま小さな声で呟く。

「それのどこがなんともないんだ?」
私を見下ろし、冷たい声で言い放った金崎部長。

「自分の事くらい、自分で分かります。何ともないと言ってるんですから放っておいてください」

「・・・目の下にでっかいクマ作ってるくせに、どこが大丈夫だって?」
「・・・」

化粧で隠しているはずだった。…鏡に映った大きなクマ。流石に隠した方がいいとメイクはしたはずだった。
それなのに、全くクマは隠せていなかったようだ。…葉月さんもきっとそれに気づいていたに違いない。

「お前の代わりはいくらでもいる、サッサと帰って睡眠をとれ」
「・・・そうですよね」

「・・・あ?」
「私の代わりなんて、掃いて捨てるほどいますよね」

沸々と湧きあがる怒り。…誰のせいでこうなったと思ってるの?誰のせいで、こんなに悩んでいると思ってんのよ?!

「…島谷」
「そんなどうでもいい部下の事なんて放っておいてください!…抱きしめたり…キスしたり…悩ませるような事ばかりしないで」

その言葉と同時に涙が流れた。
…俯いててよかった。…薄暗い資料室、泣いてる事が隠せるから。

「…言いたい事はそれだけか?」
その言葉にカチンときた。

「もっとありますよ!酔ってる私を介抱したり、家に泊めたり、悠斗さんから引き離したり、一体何を考えてるんですか?ただの部下にそんなことしませんよね?部長は一体、私をどうしようとしてるんですか?私をどう思ってるんですか?」


その言葉に、不機嫌な顔が・・・鉄仮面のような顔が、崩れた。
凄く優しい眼差しで私を見下ろしている。

・・・その顔に、胸が締め付けられた。
・・・そんな優しい顔しないで。・・・怒っていたいのに・・・怒っていられなくなる。
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