不機嫌な君
「…そんな一方通行な恋なんてやめて、オレにしときなよ。オレは、ひとみちゃんが好きだよ。この気持ちに、嘘偽りはない」

「…ダメです。…ダメ。
言ってくれなくても、金崎部長が好きです。…この気持ちに、正直でいたい。だから…」

「…ひとみちゃん…」
…、悠斗さんの声が聞こえない。
…両耳に温かい物が置かれ、塞がれている。…聞こえるはずがない。

私は、上を見上げた。

「…金崎部長」
…、私の耳を塞いでいるのは金崎部長だった。

…悠斗さんに向かって、何かを話しているみたいだが、耳を塞がれている為聞こえない。

悠斗さんに目線を向けると、どんどん顔が歪む。…一体何を話してるの??

私はジタバタして外そうとするが、絶対無理…あ〜!!聞きたい!!

…⁈…
一気に、周りの音が聞こえ始めた。

「もう!何してるんですか⁈」
「…ごゆっくり」

「…は?…え?…何が?」
ちんぷんかんぷんな私を置いて、金崎部長は、喫茶店を出て行った。

…一体、何しに来たのか?
私は首を傾げた。

…後ろから、クスクスと、笑い声が聞こえてきた。
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