不機嫌な君
今まで、それなりに彼女をつくった。…だが、それを口にする事は、ただの一度もなかった。

そのせいで、別れたこともある。俺の気持ちが分からないと言って。
そういわれても、頑なに、好きだの愛してるなどという言葉は口にしなかった。

自分の気持ちがそこ迄なかったと言うこともある。愛してやまない、手放したくないと思う程の女に出会わなかった。

日本で出会う事は無く、アメリカ行きが決まり、アメリカでは、仕事に追われ、そんな事を思う余裕もなかった。

…そんな矢先、突然の帰国命令。
ゆくゆくは後を継がなければならなかったが、もうしばらくはアメリカで頑張るつもりでいたのに。

最初は、気乗りせず仕事を再開。…そして、ひとみに出会い、俺の中で少しずつ何かが変わり始めた。

土足で俺の心に入り込むひとみ。最初は本当に嫌いだった。…それなのに、彼女を知るうちに、もっと知りたい、知れば傍にいたい。傍にいれば、手放したく無くなった。

そんな彼女の傍には、いつもあいつ、大西悠斗の存在があった。
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