不機嫌な君
「優姫や、親たちがいってる事はただの戯言だ。…結婚相手くらい、自分で決める」
「・・・」

「捻くれ者の彼女が。離れていかないように、これを着けさせとく」
「・・・・?!」

金崎部長は、私を放すと、ポケットから何かを取り出した。そしてそれを、私の指に、はめた。
・・・こ、これって。

驚きのあまり、口をパクパクとしていると、金崎部長は少しだけ笑った。

「…お前は金魚か?」
「き?!」

どうして私が金魚なのよ!と、突っ込みたくなったが、次の言葉に、いとも簡単に打ち消されてしまった。

「婚約者は、優姫じゃない・・・お前だ、いいな?」

「・・・な、んで」

その言葉に、感極まって、目の前が歪む。…涙が溜まり過ぎて、視界が歪む。

…あの日以来、仕事仕事で、恋人らしいことなど皆無。顔を合わせれば、怒られてばかりで、それに反論して喧嘩になる。…あの言葉が、嘘だったんじゃないかって、毎日が不安で押しつぶされそうだった。・・・そんな矢先、婚約者だと言う人まで現れて、もう、絶対、何もかもダメだって思ってた。

「…不安なんだ」
「・・・え」

思ってもみなかった金崎部長の言葉。・・・不安だった?・・・金崎部長が?私なんて女子力ゼロで、ドジで、バカで、鈍感で、・・・こんな私に言い寄る男の人なんていないのに。

「お前っていつも真っ直ぐで、誰にでも好かれる。俺が目を離せば、どっかの男にだまされて、どっかに連れ去られてしまうんじゃないかって」

「…そんな、子供じゃないんですから」
「…子供よりたちが悪い」
「なっ?!」

「お前は、知らいないうちに、男を誘惑する悪い癖があるから、その指輪は魔除けだ」
「…魔除けって・・・」
男を誘惑する悪い癖・・・そんなモノ、私にはない・・・と思う。

「それに、今日みたいに勝手に勘違いして、俺から離れていこうとする悪い癖も」

「・・・」
悪いところだらけじゃん。…と、落ち込んでしまう。
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