不機嫌な君
そんな私を、金崎部長はまたギュッと抱きしめた。

「…部長」
「・・・なんだ?」

「…抱きしめられるのは凄く嬉しいんですけど、一目が気になります」
「・・・」

…そう、今の時刻、まだ夕方6時を回った頃。
道には車が走り、下校中…帰宅途中の皆様が大勢いる。

…しかも、その人たちは、私たちをしっかり見ている。
恥ずかしすぎて、死にそうだ。

「…だから、早く家に入れろって言ったんだ」
悪びれもなく答えた金崎部長。

「…入る前に、話し始めたのが誰ですか?」
私は真っ赤な顔で怒りだす。

まだ何かいおいとした金崎部長だったが、もうこれ以上、好奇の眼差しで見られるのはごめんだ。
私は金崎部長の背中を押して、自分の家に、金崎部長を押し入れた。

「…ギャッ?!」
「…色気のない声だな」
若干呆れ気味にそう言ったのは金崎部長。

「きゅ、急に、ギュッと抱きしめるからじゃないですか?」
…中に入った途端、またしても抱きしめられた。・・・・しかも、結構強い力で。

「…仕方がないだろ?…ひとみが不足しすぎて、どうにかなりそうなんだから」
「///!!」

その言葉に、一気に顔が赤くなる。…ひとみって言われた。…私が不足って…どういう・・・。

「ひとみとずっとこうしたかった」
そう言って、私のおでこにキスをし、そのキスはだんだん下に下りてくる。


「部、部長、キャラ、違い過ぎです!///」
そう叫べば。

「…どちらかと言えば、こっちの方が、本当の俺だ」
「・・・ん~!!・・・」

フッと笑った金崎部長は、そのまま、私の口を塞いだ。
・・・その日の夜は、金崎部長のあまりにも情熱的な愛撫に、何も考えられなくなった。

・・・金崎部長は、情熱を内に秘める人なんだと初めて知った。
そんな人が情熱を表に出すと、受け止めるの容易でない事も、この時初めて知った。
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