代行物語

決戦は金曜日?

佳夫にとって、昼間の仕事が特に不満が有るわけでは無い、嫌むしろ遣り甲斐を感じる仕事だった。じゃあ何故?代行の手伝いなどしようと思ったのだろう?佳夫はそんな自問自答を繰り返しながら年末の慌ただしさの中終業の時を迎えようとしていた。巷は忘年会シーズン、イケる口を持った同僚などは待っていましたとばかりに喉を潤す格好な口実を作っては夜の繁華街へ足蹴く通うのであった。そんな同僚達を横目に見ながら昼間の雑踏から徐々に静寂に包まれていく会社を後にした。
自宅への道すがら、未知なる仕事への期待とも不安とも判らぬ感情に胸躍らすのであった。
家に戻り、風呂に入って軽めの夕食を済ませ身支度を整えている佳夫を横目に妻は昼も夜も大変だねと労いの言葉をかけてきた。
専業主婦の彼女いしてみれば佳夫の行動は理解できないものだったのかも知れない。
しかし言い出したら聞かない佳夫の性格も知っているので、やりたいならやればといった具合なのだ。

身支度といっても、特に制服がある訳ではないタモツにはGパンとかスニーカーなんかは駄目ねとは言われたので、とりあえずスラックスとYシャツそれに支給されたブルゾンとこんな感じでの初出勤を迎えるのであった。

普通の場合、事務所で点呼を受け当日組む人と随伴車輌の点検を行うものなのだが、タモツの会社の場合これを本業として従事している人が一人もいない、いわゆるアルバイト集団で結成されている会社なものだから、出勤してくる時間帯もまちまちで、当日の予定台数が揃うのは夜の八時を回ってしまうこともしばしばの状態なのだ、そんな調子だから早い時間帯に依頼が入ると行ける車が無くてお断りするケースもあり、タモツの最大の悩みになっているらしい。

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