代行物語

天武の林さん

「居酒屋 天武」いわゆる個人営業の小さな居酒屋である、お客といえば常連客が中心のほのぼのとした飲み屋で比較的タモツの会社はごひいきにしてもらっているお店のようだ。
天武に向かう道すがら、川口から依頼主の林さんにつておおよそのレクチャーがあった。
林さんは代行の方でも常連客らしく、行動範囲は居酒屋からスナックか自宅へ直行の二通りしかないらしい、またスナックはパピヨンというお店にしか行かないそうだ。
時間帯もほぼ決まって居酒屋は9時ごろ出てスナックに行く場合は約2時間程度で帰りになるらしい。
その日の酔い加減でスナックに行くか自宅かは分かれるともいっていた。
そんな前情報を受けながら、車は「居酒屋 天武」に到着した。
到着したら、センターに到着の旨を無線で知らせる、佳夫も無線で到着のコールをセンターに送った。
それとほぼ同時に川口が天武の店内に入って行くのを確認した、依頼主に到着を知らせるためだ、程なくして川口は店から出てきて客待ちの体制になった。
依頼主が直ぐ出てくる場合と、なかなか出てこない場合があり、会社によっては待ち料金なるものを設定しているところもある、タクシーなら待っている間でも料金メーターがどんどん上がっていくのではっきりしているが、代行の場合それが付いて居ないので着時間から何分かで料金を取るように決めているのだ。
林という客は、あまり待たせるタイプでは無いことも、前情報で得ていた。
どんな人が出てくるのか、入り口を見ているとお店の引き戸がおもむろに開いた、人が居ない!?と思ったら引き戸の影から、ドリフのコントでみるような見事な酔っ払いが姿を現した、絶妙な千鳥足少し前に出たかと思うと後ろに下がるあの浜辺に寄せては返す波のような動き少し差し出した右手は何を掴む訳ではないが素面の者には見えない何かを求めているかのような動き、左手にはお土産なのか袋をぶら下げそれが以外にバランスの役目を果たしているかのように見える、正にKING OF 酔っ払いといったところだ。



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