インナーチルドレン(かわいい金魚番外編)
泣いている子ども
細い銀色のフレームのメガネをかけて、長いストレートの黒髪を、後ろで縛っている。
カーキ色のスーツ。
一言で言えば、地味なタイプ、だ。
こんな道端の絵に、足を止めるタイプじゃない。
多分、自分でも不思議に思っているのだろう。
立ったまま、足元に拡げている純の絵を所在なさげに見ている。
柔らかな色彩の、草原と昼の白い星。
海の先にある、教会の鐘楼。
現実とファンタジーの狭間のような絵は、純の同居人には、よく「見かけによらない絵」だと笑われる。
いいじゃんか。
絵なんか外見で描くもんじゃねぇや。
純が拗ねて言うと、同居人は、嬉しそうに、いつも笑う。
おまえが、こんな優しい絵が描けるヤツでよかった、って言ってるんだ。
純が大好きな、笑顔。
思い出して、純は、両手で頬を撫でた。
子供たちは、手を取り合って純を見上げている。