【完】GAME OVER
その手を掴んだ雅があまりにも低い声で言うから、乃花もさすがに怯んだらしく、手を引っ込める。
「千夜はDECIDEの姫にする。
どういうことか、言わなくてもわかるよな」
「CHESSの、姫……」
誰かがぼそっとつぶやいたのが聞こえた。
「って、ことだから。
本当の裏切り者は千夜ちゃんじゃないってわかったでしょ?」
「っ、ちょっと待ってください!」
唐突に声をあげたのは梓真で。彼は哀しげな瞳を湊人と雅に向けたあと、私に向けた。
「今、千夜と付き合ってます。
乃花とも別れて、新たにやり直すことにしてるんです」
唇を噛む。そうだ。雅とこんなにも近くで過ごしているけれど、私はまだ梓真と付き合ったまま。
「噛むな、千夜」
彼が「傷つくから」と制すから、薄く口を開いて小さく息をついた。無意識に泣きそうになっている私の頭を撫でた雅は。
「そうみたいだな。
でも、俺はこいつを離す気なんてねぇんだよ」
「南さん、」
「千夜が乗り換えたみたいな言い方するのはやめろよ。
付き合う話を持ち出したのは俺の方だからな」