【完】GAME OVER
何か言いたげな乃花から離れて、梓真の元へ行こうとすれば。雅が軽く手を引いてきた。
「大丈夫だよ」
「………」
「ちゃんと戻ってくるから」
そう言えば、やんわりと手が離れて。梓真の元に行くと、「千夜」と彼が私の名前を呼んだ。
「梓真も……ごめんなさい」
頭を下げると、梓真は再び名前を呼んで。ゆっくり顔を上げると、曖昧な梓真の表情が視界に入った。
「はっきり言うと、言いたいこと色々あるんだけどさ。
千夜のこと傷つけたのに、幸せになろうとしてる千夜のこと引き止めることなんて俺にはできないよ」
「梓真、」
「千夜は裏切ってなかったのはちゃんとわかったし、それで十分。
──南さん」
梓真が、雅を呼ぶ。彼が視線を向けたのを確認して。
「千夜のこと……
よろしくお願いします」
「……っ」
頭を下げた彼のその言葉を聞いて。ひどいかもしれないけど、本気で、梓真のことを好きになってよかったって思った。