【完】GAME OVER



ママはそんな私を見て、「仕方ないことよ」と、優しく言ってくれる。



「人の感情を引き止めておくなんて、無理なのよ。

ただ、千夜ちゃんにひとつだけ」



ママが、微かに屈んで、すこし低めの身長の私と目線を合わせる。



「否定しちゃだめよ」



「、」



「自分の、誰かに対する恋心を否定しちゃだめ。

つらくなるだけだから、ね?」




こく、と、頷く。



「隠すのと否定するのは違うわ」



ふわりと微笑んだママの言葉を、納得したときだった。



──ピーンポーン



そんな音が、家の中に響いた。



早くも着替えを終えたらしいパパが部屋から出てきて、「識音」とママに声をかける。



「夜遅いし、とりあえず俺が出る」



< 92 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop