ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
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「ーーー朝、か………」
全然寝た気がしない。
私は寝覚めの悪い夢を振り払うように軽く首を振って、
やけに重い身体に苛々しながら、ベッドから脱け出した。
カーテンの隙間から、白い陽の光が射し込んでいる。
しゃっとカーテンを引くと、ぶわっと光の洪水。
眩しさに目を細めた。
「………あぁ、会社行きたくないな……」
そんな気分になるのは珍しかった。
私は仕事が好きだ。
むしろ、仕事しか好きじゃない。
いい仕事をすることが、売れる作品を世に送り出すことが、私の生き甲斐。
でも、ほんのたまに、身体が重くて、満員電車に乗って会社に向かうのが億劫になることがある。
たとえば、今朝みたいに、胸くそ悪い昔の夢を見たような朝。
「………でもまぁ、そんなこと言ってらんないわ」
窓の外に広がる清々しい朝の景色を睨みつけ、私は寝室を出た。