ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
カクテルグラスに唇をつけながらつっけんどんに言うと、男は視界の端で



「そうかなぁ?」



と首を傾げている。




「きれいな人は、いつどんな場所で見てもきれいですから。

そりゃもう、振られた後だろうが、愛の告白の最中だろうが、タイタニック号が転覆寸前だろうが、きれいな人はきれいなんです。

で、僕はきれいな人を見ると、黙っていられない質なんですよ」




へらへらした顔で言われた言葉が、あまりにもとんちんかんな答えだったので、私は呆れて物も言えない。



どうやらこいつは、生まれながらの浮気性で女好きな男らしい。




これ以上喋っていると馬鹿ウイルスに感染してしまいそうなので、私は残りのカクテルをぐいっと飲み干し、席を立った。




「あ、もう帰っちゃうんですか」



「ええ、ごきげんよう」




私は男に背を向けてひらひらと手を振り、颯爽とバーを立ち去った。





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