ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛







「もう、先生ったら……飲み過ぎですよ」




私の身体にぴったりとくっつくようにして傍らを歩く嶋田先生に、私は困ったような笑みを浮かべてそう言った。



嶋田先生が嬉しそうに相好を崩し、




「君みたいな綺麗な女性と食事したんだから、酒が進むのは仕方がないだろう」




と耳許に囁きかけてくる。



酒臭い。


私は目立たないように眉をひそめ、先生から少し身体を離した。



それでも先生は私の肩に腕を回して、寄りかかるように歩く。




「いやぁ、おいしかったねぇ」



「はい、とても。ご馳走様でした」



「いやいや、女性にご馳走するっていうのは男冥利に尽きるからね」




その言葉を聞いて、なんとなく朝比奈先生のことを思い出した。



正反対だ。


あの人は女にご馳走するどころか、何もかも女に用意してもらっているんだから。


ほんと、とんでもない男だわ。



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