ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
私の肩を抱いたままで歩く嶋田先生の足もとが、ふらりと揺れた。


かなり酔いが回っているらしい。



この分なら、いざとなったら逃げられそうだな。


そう考えた私は、恥じらうように目を伏せて、



「………じゃあ、一杯だけなら……」



と応えた。



先生は下卑た笑みを浮かべて、「それはよかった」と頷く。




「じゃあ、さっそく向かおうか」



「………はい」




私のこの反応を見れば、先生は今夜私をものにできると勘違いしたに違いない。



浮かれた様子で、私を引っ張るようにして、目的のホテルに足を踏み入れた。




先生はふらふらと身体を揺らしながらエレベーターに乗り、最上階のバーへと私を導く。



確かに、とてもお洒落で洗練された雰囲気の店だ。




先生は慣れた足取りでカウンターに腰掛け、顔見知りらしいバーテンダーに向かって軽く手を上げる。




「私はマティーニにしようかな。

香月くん、君は?」



「ええと、じゃあ……スプモーニで」




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