ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
あまり酔いたくないので、私は一口ずつ味わうように見せかけて、かなりゆっくりと飲んだ。



先生はハイペースでグラスを空け、何度もお代わりをしていた。




小一時間ほど経ったところで、先生の目が据わってきたのを見計らって、私はすらりと腰を上げる。




「では、私はそろそろ失礼いたしますね」




そう言った途端、先生がさっと私の腰に腕を回した。




「香月くん、まあ待ちたまえ。

ずいぶん酔っているみたいだから、休んで行きなさい。

すぐ下に部屋をとってあるんだよ」




ーーーやっぱり来た。


『すぐ下』の部屋ということは、スイートルームか。



やる気満々じゃないの。




でも、ね。


私はそんなに安い女じゃないのよ。




「あら、ご心配いただいてありがとうございます。

でも、平気ですよ。

私、それほど飲んでいませんもの」




にこやかに流そうとする。



でも、へべれけに酔った先生は、なかなか手強い。




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