ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「これから電車で帰るのも大変だろう?

遠慮しないで泊まっていきたまえ。


ああ、とりあえず出ようか」




先生は左手で私の腰を掴んだまま立ち上がり、ポケットから出した一万円札をカウンターに置いた。



そのままバーの外へと私を連れ出す。



私は穏やかな笑みを浮かべたままエレベーターに向かい、下に向かうボタンを押した。



腰に回された先生の手が熱い。




エレベーターの中に乗り込むと同時に、先生が私の首筋に唇を寄せてきた。



気配を察した私は、何気ないふうを装ってさっと顔を背け、フロント階のボタンを押す。



すると、即座に先生が手を伸ばして、すぐ下の階のボタンを押した。




「………香月くん、いいだろう?

次の作品は、是非とも真栄から出させてもらうよ」




とうとう、はっきりとした交換条件を出してきた。



………この狸じじい。


こんなに若くて美しい私とお酒が飲めただけで、もう十分でしょうが。


これ以上を望むなんて、身の程知らずもいいところよ。




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