ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「………先生。

今夜は、ご遠慮させてください………。

心の準備が………」




私は頬を押さえるようにして俯き、小さく囁く。



こう言えば、たいていの男は次回に期待して、手を離してくれる………はず。


でも、耄碌した嶋田先生には、通用しなかった。




「いらないよ、心の準備なんて。

君は安心して私に任せてくれればいいんだよ………」




あぁ、気持ち悪い。


なんていう勘違い男。



私みたいな女が、あんたみたいな古臭い男に身体を許すとでも思ってるの?




そのとき、ゆっくりと動き出していたエレベーターが止まり、扉が開いた。



もちろん、スイートルームのある階だ。




「さぁ、香月くん。

恥ずかしがらずに、ほら、おいで………」




先生の酒臭い息が耳許に吹きかけられ、ぞっとして動きを止めてしまった瞬間、扉の外に連れ出されてしまう。




「先生、本当に、今日は………」




「もう遅いよ。

ほら、降りてしまったんだからね」




先生は有無を言わさず足を踏み出した。




< 137 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop