ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
ーーーあぁもう、このエロ親父め。


殴ってやろうかしら。



でも、機嫌を損ねるわけには………。



私がぐるぐると逡巡していた、そのとき。




「ちーえこ」




場違いなほどに明るい、能天気な声。



私と嶋田先生は、同時に、声のした方向に視線を向けた。



そこに立っていたのは。




「………えっ、朝比奈先生!?」




隣のエレベーターから出て来た、朝比奈光太だった。




「………あ、朝比奈先生………こんなところで何を………」




驚きを隠しきれずに訊ねる私に向かってにこりと笑いかけてから、

朝比奈先生は嶋田先生にぺこりと頭を下げた。




「嶋田先生ですよね?

ご無沙汰しております。


僕のこと、覚えておいででしょうか。

真栄社新人賞のパーティでお会いした朝比奈光太です」




嶋田先生は、私の腰に回していた手をぱっと離し、朝比奈先生に向かって鷹揚に微笑む。




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