ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「………まぁ、いいよ。

仕事なんだよね?」



「当たり前です。

仕事じゃなければ、あんなエロ親父と二人きりで会ったりしません」



「だよね。よかった」




朝比奈先生が小首を傾げて、にっこりと笑う。



この人は、本当によく笑う。


屈託のない笑み。


子どもみたいな。



そんなことを考えながら見つめていると、ふいに、ゆったりと細められた先生の目が近づいてきた。



え、と戸惑った一瞬。



かすめるように触れ合った唇に、私は肩を震わせた。




「………なっ、なんですか、いきなり!」




思わず叫んでから、静まり返った廊下に反響した声に焦る。



慌てて声を落として、



「びっくりした………いきなり」



と咎めるように先生を見る。



先生はきょとんとした顔になり、



「いいじゃん。

だって、俺たち、恋人どうしでしょ?」



と当然のように答えた。




「それはそうですけど、こんなところで。

あなたには常識とか羞恥心とか、ないんですか?」




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