ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「そうかなあ?

ほら、顔も真っ赤になってるし。

キスくらいで、可愛いなぁ」



「………やめてください」




可愛い、なんて言われ慣れていない。



なんだかむず痒いような気持ちになる。




………ああ、なんなの、これ。


私としたことが。



私は朝比奈先生というラスボスを倒して、この恋のゲームを有利に進めなきゃいけないのに。



それなのに、どうしてだろう。


調子が狂ってしかたがない。



どうすれば形勢を逆転できるのか、頭を悩ませながら、私は朝比奈先生に引きずられるようにしてエレベーターに乗った。




ホテルのロビーを抜けて、夜も深まった街に出る。




「そういえば………先生はどうしてあそこにいらっしゃったんですか?」




今さらながらにそのことに気づき、隣をゆっくりと歩く先生に視線を向ける。



先生がにっと笑った。




「俺もあのバーで飲んでたんだよ。

学生時代の仲間と一緒にね。

そしたら、君と嶋田先生が入ってきたものだから、目を疑ったよ」





< 145 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop