ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「しばらく様子を見てたんだけど、いかにも危なっかしい雰囲気で。

そのままバーを出て行っちゃったから、慌てて追いかけたんだ。


ほんと、追いかけて正解だったよ。

あのままだったら、俺の大事な恋人が奪われちゃうところだったんだから」




…………甘い。


この人、付き合うとこんなふうなの?



だめだ、居心地が悪すぎる。




「………それはどうも、嫌な思いをさせて申し訳ございませんでした。


じゃあ、私は明日がありますので、ここで失礼させていただきます」




切り口上に告げて、私は朝比奈先生に頭を下げた。




「え? もう帰っちゃうの?」




目を丸くするしている朝比奈先生に、「ええ、帰ります。明日朝が早いので」の答えて、私は駅に向かって歩き出した。




「残念だなぁ。

あっ、明日のこと忘れないでね!」




先生が恥じらいもなく声を上げる。


ちらりと振り向くと、ぶんぶんと手を振っていた。




ーーーほんと、子どもみたいな人。




< 146 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop