ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
唐突な恋の終わりが悲しくてわんわん泣いていると、彼女は俺にハンカチをくれた。


手触りの良い、品の良いハンカチ。



なんて優しくて素敵な女性なんだと感激したんだけど。


どうやら、号泣する俺に呆れ返っての行動だったらしい。



それでも、俺のことをけちょんけちょんに貶す冷たさも、彼女の高潔な美しさを際立てるだけだった。



ミナちゃんにも振られたことだし、今度はこの美しさ人を口説こう、といきり立ったところで、彼女は蝶のようにひらひらと俺の前から消え去ってしまったのだった。



………あぁ、惜しいことをした。


店を出る間際に、俺はマスターに訊いてみた。




「先ほどここに座られていた美しい女性は、よくこのバーに来るんですか?」




「あぁ、そうだね、たまにいらっしゃるかな」




それなら、この店に通っていればいつかまた会えるだろうと、俺は未来が薔薇色に輝くのを感じた。






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