ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
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「いらっしゃい、智恵子」
玄関のドアが開いた瞬間、私は朝比奈先生の満面の笑みに出迎えられた。
「お邪魔します」
ぺこりと頭を下げて、玄関に上がる。
右手に持ったレジ袋が、ずっしりと重い。
ここに来る途中で、スーパーに立ち寄り、夕食を作るための食材を買ってきたのだ。
先生はその袋をさっと私の手から奪い取り、「お疲れさま」と笑った。
「なに作ってくれるの?」
わくわくしたような顔で、いそいそと袋の中を覗き込む先生。
私はそれを制して、
「それはお楽しみですよ」
と答えた。
「キッチン、お借りしますね」
「どうぞ。最近つかってないから、汚れてるかもしれないけど」
「かまいません」
キッチンに入ってみると、意外にも調理器具などはそろっていた。
こまごまとした小物や、花柄のフライパン、レース模様の鍋敷き。
いかにも女性が買い揃えたという感じが伝わってくる。
テディベア柄のミトンを手に取って見ていると、先生が寄ってきた。