ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「それは妬きたくもなりますよ。

恋人の部屋に昔の女のものがあるのを見つけたら、どんな女でも穏やかではいられません」




あまり大げさになりすぎないように軽めの口調で言い、ちらりと見上げると、

案の定、先生は嬉しそうに笑った。




「へえ、意外だなあ。

智恵子でも妬いたりするんだね。

君みたいに魅力的な美人なら、どんな女にだって勝てるって自信を持ちそうなものなのに」




もちろん、その通りよ。


この私がそこらの女に負けるわけないじゃない。



でも、そんなことを言ったら、さすがに引かれるに違いない。




「そんなこと思いません。

それに、それとこれとは話が別っていうか………やっぱり他の女性の影が見えたりしたら、不安になります」




そう呟いてから、顔色を窺うようにじっと見つめて、




「………もしかして、そのアオイさんっていう人と、まだ関係があったりして」




半分冗談、半分本気、というふうを装って訊ねてみた。




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