ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「そんなわけないじゃないか。

俺は今、智恵子ひとすじだよ」




先生がちゅっと頬にキスをした。



またもや不意打ち。


でも、さすがに慣れた。




「………もう、先生ったら」




私は頬をぎゅっと右手で押さえて、上目遣いで先生を見つめ、さらに言い募る。




「キスなんかじゃごまかされませんよ。

だって、先生はついこの間まで、何またもかけてたじゃないですか。

私ひとすじだなんて、信じられません」




それだけ言って、私は先生にくるりと背中を向けた。




「本当だよ」と先生が声を上げるけど、私はふるふると首を横に振る。




「いいんです、それでも。

時間をかけて、私だけを見てくれるように頑張りますから」




恋のゲームの必勝ルール、その2。



『健気な女を演じる』。




男は、一途でいじらしい女が好きなのだ。


まあ、そんな女は実在しないけどね。



男って馬鹿だから、いつまでたっても、少年漫画に出てくるような純粋で無垢で健気な女が現実に存在するって信じてるのよね。




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