ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
ふう、と息を吐いて、私は料理に戻った。


油を引いて豚肉の小間切れを炒め、玉ねぎも投入する。



残りの具材を入れて軽く炒め終わったら、日本酒と水を入れて沸騰させ、味付けをして、ことこと煮込む。




次に、別の鍋でほうれん草を茹で、水で引き締めて、5cmほどに切り分けた。



絹ごし豆腐も一口サイズに切る。




その間ずっと、先生はキッチンの入り口あたりの壁にもたれて、にこやかに私の姿を観察していた。




「いやあ、手際がいいねえ、智恵子。

それに、いい匂いがしてきた。

お腹がすくなあ」



「もう少しで出来ますよ」




こんなに見られながら料理をすることはないので、なんだか妙な気分だ。



今までも男に料理を作ってあげたことがあったけど、みんな私がキッチンにいる間は、ごろごろしているかテレビを見るかだったのだ。




ご飯は、ここで炊いていたら間に合わないので、自分の部屋の炊飯器で炊いたものをタッパーに詰めて持ってきている。



他の料理がだいたい出来上がったのを確かめて、ご飯をレンジで温めて、ごはん茶碗に盛りつけた。




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