ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「冷めてしまうので、とりあえず、召し上がってください」



「ああ、うん、いただきます」



「お口に合うか分かりませんが……」




先生が箸を手にとった。


肉じゃがのじゃがいもを箸にとって口に運ぶ。




「おいしい! すごくおいしいよ、智恵子」



「よかった、ありがとうございます」




先生は箸の使い方がきれいだった。



合格、と私は思う。


食べ方がきれいな男は好きだ。



あっという間に食べ終わった先生は、「ごちそうさまでした」と手を合わせて私に笑いかけてきた。



私もにこやかに「お粗末さまでした」と答える。




「本当においしかったよ。

ねえ、また作ってくれる?」



「もちろんです」



「やった」




無邪気に微笑んだ先生が腰を上げ、私の隣に移動してくる。




「おなかいっぱいになったら、なんだか甘いものが欲しくなってきたなあ」




先生は私にぴったりと寄り添って言った。




「甘いもの、ですか。

何か買ってきましょうか?」




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