ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
すると先生が、いたずらっぽく笑いながら、優しく囁く。




「君の唇ほど甘いものはないよ」




…………は?


と首を傾げようとしたときにはもう、深く口づけられていた。




「ちょ……っと、せんせ……」



「うん、やっぱりすごく甘い」




少し顔を離して、先生が満足気な微笑みで覗き込んできた。




ーーーなんなの、この女たらし。



私は呆然として先生を見つめた。



『君の唇より甘いものはない』?


デザートは君がいい、みたいな?



小説家のくせに、安いドラマで使いまわされたような台詞を吐くなんて。



でも、実際にそんな言葉を口に出す男なんて見たこともなかったから、逆に新鮮で驚いてしまった。




「やみつきになる味だなぁ。

もう一口、いただいちゃおうかな」




私が答える前に、先生は私の顎をそっとつかんで、さらに深いキスをしてきた。




ーーーさすが、ろくでなしの女たらし。


いかにも慣れた感じだし、しかも、上手い。




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