ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
しばらくして、ふいに先生の動きが止まった。



私は瞼をあげ、先生の様子を確かめる。




「……………」




先生はどこか困ったように眉尻を下げ、かすかに微笑みを浮かべて私を見下ろしていた。




「………先生? どうしたんですか?」




小さく訊ねると、先生はゆっくりと身を起こした。


そして私の手首をつかみ、そっと引いて起き上がらせる。




「先生………?」




もう一度そう声を上げると、先生は床の上に腰を下ろして、ソファの上の私をじっと見つめた。




「………やめた」




先生は穏やかに笑ってそう言った。



その言葉が、小さく胸に刺さる。



やめたって? どういうこと?


私相手じゃ、そんな気にならないってこと?



………どうしてよ。



ーーー『可愛くない』から?




自分の考えに胸が抉られるような気がした。



何も言えず、私は俯く。



知らぬ間に、私は膝の上で手を握りしめていた。




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