ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
食器を持ってキッチンに向かう先生の後に、私もついていく。



先生はシンクに食器を置き、蛇口をひねってスポンジを濡らした。


私は先生の隣に立ち、手際良く食器を洗っていく様子をぼんやりと眺める。




「智恵子、すすいでくれる?」



「あ………はい」




肩を並べて食器を洗っていると、先生はにこりと笑って、




「なんだか仲のいい新婚さんみたいだね。

こういうの、いいなあ」




なんて上機嫌で言っている。



私は頭がついていかなくて、何も答えずに食器をすすいでいった。



洗い終えると、先生はコーヒーを淹れてくれた。




「食後のコーヒーってさ、なんでこんなに贅沢な気分になるんだろうね」



「そうですね……」




先生はコーヒーの入ったマグカップを私に手渡し、向かいに座った。


さっきまでは身体を寄せて隣に座っていたのに。



急に、黙っていられないような気持ちになって、私は口を開いた。




「あの、先生………」



「ん?」




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