ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
私は先生の意図を確かめようと、もう一度たずねた。




「私が先生を好きにならないと、だめなんですか………?」




先生が微笑みながら頷く。




「そうだよ」




私はそれを絶望的な気持ちで聞いた。


先生は構わずに、追い打ちをかけるように続ける。




「だから、智恵子………早く、俺のこと、好きになってよ。

心から、ね」




頭が真っ白になった。




ーーー無理だ。



そんなの、無理。


できない。



私には、誰かを心から好きになることなんて、できない。




「………ごめんなさい。

私、帰ります」




私は飲みかけのコーヒーをテーブルに置き、鞄をつかんで、逃げるように玄関から飛び出した。



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