ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛







「おーい、香月!

ちょっとこっち来てくれ」




外回りから戻ってくるとすぐに、編集長から呼ばれた。



私は「はい」と答えて編集長のデスクに向かう。




「おつかれさん」



「ありがとうございます。

なにかありましたか?」



「いや、ちょっと近況報告でも聞こうかと思ってな」



「そうですか。

吉野先生は校正まで終わっています。

嶋田先生のところには今日ゲラを持っていったところです」



「なるほど。順調だな。で?」




編集長が先を促すように眉を上げたので、私は溜め息をこらえて話し出した。




「………朝比奈先生のほうは、まだなにもご報告できるようなことはありません」




編集長が意外そうに目を瞠った。




「まだなにも? ひとつも進展なしか?」



「………すみません。私の力不足です」




ぺこりと頭を下げると、編集長がうーんと唸った。




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