ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「………さあ、さっそく始めますよ。

まずは、文庫は文庫、単行本は単行本、雑誌は雑誌でそろえていきましょう。

片付ける場所を先に決めてください」



「はーい」




なぜだかわくわくしたように手を上げた、妙に楽しげな先生に指図をしながら、小一時間ほどで掃除を終えた。




「いやぁ、なかなか気持ちいいもんだね、掃除って」




先生はやけに清々しい顔をしている。




「それは良かったです。

これからは一人で片付けられますね?

この状態を維持するよう、努力してください」




私がそう言うと、「ええっ」と先生が素っ頓狂な声を上げた。




「なんですか?」



「一人で片付けなんて、つまらないよ。

智恵子が来てくれなきゃ掃除なんかやらないよ」




いじけたような顔をして、先生が私のもとに寄ってきた。


そのまま腕を広げたので、抱きつかれる、と思って私は身構える。



でも、先生は、はたと我に返ったように動きを止めた。




「しまった、ちがうちがう」




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