ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
笑いこけている先生をじっとりと睨みつけるように見ていると、先生は涙の浮かんだ目を拭いながら「ごめんごめん」と言った。




「いやぁ………智恵子っておもしろいね」



「………は? そんなこと言われたことありませんけど」



「いや、おもしろいよ。なんていうか……予想外なことばっかり。

どうやったら好きになれるかって、ふつう、本人に訊く?」




先生は笑いをこらえながらそう言った。


言われてみれば確かに、とも思うけど。




「でも、あなたに訊くしかないじゃないですか。


あなたが言ったんでしょう?

私があなたのことを好きにならないと、私のことを好きになってくれないって。


私はどうしてもあなたのことを好きにならなきゃいけないんです。

教えてください」




一気に言うと、先生がぽり、と頬を指先でひっかいた。




「………うーん、なんだか複雑だなあ。

そんなに、俺を好きになるのって難しいの?

俺、それなりに女の子に好意を寄せられたことがあると思ってたから、なんだか切なくなっちゃうな」





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