ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛







「さて、どこに行こうか?」




マンションを出ると、先生は楽しそうに微笑みながら私を見下ろした。




「そうですねえ………」




考えてみて、ふと気がつく。



昼間から恋人と出かけるなんて、私はほとんど経験がなかった。



平日はもちろん仕事だし、休みの日も会社に行くことが多い。


そもそも、昼間から会っても、何をすればいいのか分からない。



だから、会うのは夜だけだった。


食事をして、お酒を飲んで、どちらかの部屋かホテルに行く。


それだけの付き合い。



デートって感じでもなかったな……。



そう考えたら、私が今までしてきた付き合いって、何だったんだろう、なんて柄にもなく虚しく思ってしまった。




「やっぱり定番コースかな、初デートだしね」




私の気持ちなど知るよしもなく、先生は一人で考えを巡らせている。




「とりあえずお昼たべて、映画館行って、お茶して、みたいな?」



「………どこの中学生ですか」




とは言ったものの、私はそんなデートなんてしたこともなかった。




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