ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
▽
「さて、どこに行こうか?」
マンションを出ると、先生は楽しそうに微笑みながら私を見下ろした。
「そうですねえ………」
考えてみて、ふと気がつく。
昼間から恋人と出かけるなんて、私はほとんど経験がなかった。
平日はもちろん仕事だし、休みの日も会社に行くことが多い。
そもそも、昼間から会っても、何をすればいいのか分からない。
だから、会うのは夜だけだった。
食事をして、お酒を飲んで、どちらかの部屋かホテルに行く。
それだけの付き合い。
デートって感じでもなかったな……。
そう考えたら、私が今までしてきた付き合いって、何だったんだろう、なんて柄にもなく虚しく思ってしまった。
「やっぱり定番コースかな、初デートだしね」
私の気持ちなど知るよしもなく、先生は一人で考えを巡らせている。
「とりあえずお昼たべて、映画館行って、お茶して、みたいな?」
「………どこの中学生ですか」
とは言ったものの、私はそんなデートなんてしたこともなかった。