ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「ええ? そうかなあ。

俺はけっこう好きだけどね、そういう普通のデートってやつ。

なんか純愛っぽくない?」



「朝比奈先生が純愛とか言うと、すごく嘘っぽい気がするのは私だけでしょうか」



「ええっ、ひどい!

俺はいつだって純愛なのに」




先生がわっと両手で顔を覆い、泣くふりをした。


呆れ顔でそれを見つめながら、私はふと考える。




ーーーー『純愛』の対義語って、なんだろう?



純愛ってきっと、子ども向けの小説や漫画や映画で描かれるような、空想的なもの。

プラトニックで、一途に相手を思うこと。



それの対義語としてぴったりくる言葉は、思いつかないけど。


純愛の反対は、欲望に忠実で、不誠実で自分勝手な関係。



だとしたら、私が今までしてきた恋愛は、まさにそれだと思う。


私という女をアクセサリーのように連れ歩きたいと欲する男と、そんな男を落として楽しむ私。



先生の恋愛も、そうだ。


自分の好みに合う人にすぐに惚れて、都合のいい女の人と付き合う、自分本位な恋。



ひまつぶしの恋と、ろくでなしの恋。




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