ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「………え。せ、先生……?」




思わず声をあげると、先生がこちらに目を向けてきた。



そして、いつものようににこりと笑う。


それから加藤さんに視線を戻した。




「失礼いたしました。

あなたの目が曇っているようでしたので、殴ってしまいました。

目から鱗は落ちましたか?」




さわやかに言葉をかけられても、加藤さんは頬を押さえたまま呆然としている。


その指の隙間から、じわりと赤くなった肌が覗いている。



容赦なく殴られたようだ。




「あなたの目に智恵子がどう映っているのかは分かりませんが………。

僕から見れば、智恵子はとっても素直で可愛いですよ」




こともなげに先生は言う。



私は自分の耳を疑い、加藤さんと同じように呆然と先生を見上げた。



先生はそんな私たちの様子に構うことなく、さらに言い募る。




「あなたはどうやら、人間として正しい倫理的な言葉の使い方というものを、学んでこなかったようですね。

僕の恋人を侮辱するのはやめてください」




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