ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
ちらりと加藤さんを見ると、口を半開きにしたまま、まだ硬直している。



高校生のころの加藤さんを、ふと思い出した。


成績がよくて運動もできて、いつでも輪の中心にいて、

みんなから慕われるのを当然と思っているような、格好をつけた男だった。


たぶん今も同じだろう。



その鼻持ちならない男が、初対面の男に突然なぐられて、ぽかんと締まりのない顔をしている。




「………っ、あはははっ!!」




気がついたら、私は声をあげて笑っていた。



一度火が付いたら止まらなくて、息が苦しくなるほどに笑いが込み上げてくる。




「………ち、智恵?」




加藤さんが戸惑ったように声をかけてきた。


朝比奈先生もきょとんとして私を見つめている。



それでも私の笑いは止まらなかった。




いつも穏やかな先生が、いきなり人を殴ったことも、


格好つけの加藤さんが、殴られて呆然としていることも、



おかしくてしかたがなかった。




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