ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「………ああ、おかしい。

こんなに笑ったのは初めてです」




笑いを吐き出すだけ吐き出してしまうと、奇妙なほどすっきりした。




「先生、行きましょう」




私は加藤さんのほうには目もくれずに、先生の腕をとった。




「ち、智恵………」




ふいに呼ばれて、私は動きを止めた。



ふう、と息を吐き出すと、自然と口許に笑みが浮かぶのが分かる。



そのまま振り向いて、加藤さんを真正面から見た。




「その年になってもまだご存知ないようですので、教えてさしあげます。

女はアクセサリーじゃありませんよ。


いくら私がずば抜けた美人だからって、大人しくあなたのアクセサリーになることはありませんので、悪しからず」




ぺこりと頭を下げて、私は先生を引きずるようにして歩き出した。



背中に突き刺さる間抜けな視線を感じながら。



ーーーざまあみろ、馬鹿男。




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