ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
そのとき、ホームに電車が滑り込んできた。


でも、先生が動く気配を見せなかったので、私は話を続ける。




「すぐに別れました。

その後も、先輩たちにはからかわれるし、同級生の女子たちからは『あんなかっこいい先輩を振るなんて調子に乗ってる』とか陰口を叩かれるし、最悪でした。


ほんと、黒歴史ですよ。

人生最大の汚点です」




私は吐き捨てるように言って、先生に笑みを向けた。




「これだけの話です。

ね? よくある話で………っ」




私は途中で言葉を呑み込んだ。



ーーー先生が、いきなり抱きしめてきたから。




「………ごめん、智恵子。

今だけ、約束やぶってもいい?

って、もう破っちゃったけど」




耳許で先生の囁く声がする。



突然の抱擁に、私の心臓がどきどきと音を鳴らしていた。




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