ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
誰かのことを知りたいと思ったのも、初めてだった。



自分の気持ちの動きが信じられなくて、私は先生から目を背ける。



すると、先生が抱きしめる腕に力を込めて、ぐっと私を引き寄せた。




「………ねえ、智恵子」




やけに甘い声が囁く。




「俺は、なんでだか分からないけど、君のことが気になって仕方がないんだ。

初めて会った瞬間から。


君と付き合えるなら、もう他の女の子には会わなくたっていい、ってくらい、君を自分のものにしたかった。


こんなの初めてなんだよ………」




いつもふざけたような口調ばかりの先生が、真剣な声音で言う。



私の心臓は、痛いくらいに高鳴っていた。




先生はゆっくりと身体を離した。



それから、私の両肩に手を置き、真摯な眼差しで私を射る。




「君を見ていると、俺はいつも、張り詰めた細い糸が思い浮かぶんだ。

今にも切れてしまいそうな………。


君はね、きっと、自分や他の人が思ってるほど強くないよ。

そして、寂しがりだよ。


一人でなんか生きていけない」





< 223 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop