ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
ふう、と溜め息をもらして、私はデスクの上に積み上げてある書類を手にとった。


やらなきゃいけない仕事は山積みだ。



それなのに、なんでだか、今日は全然集中できない。



30分ほど書面と睨めっこしていたけど、ほとんどただ座っていただけでまったく進まなかったので、これでは時間の無駄だと諦めた。




「………コーヒーでも飲もう」




小さく独りごちて、私は給湯室に向かう。



ドアを開くと、中で立ち話をしていた女子社員たちが一斉に振り向いた。


楽しげだった顔が、一瞬にして笑みを消す。




「あ……香月さん」



「すみませんっ!」



「すぐに仕事に戻りますから」




あわあわと紙コップを片付けはじめた彼女たちを見て、途端に申し訳なさが込み上げてきた。



だって、私自身ついさっきまで、なにも仕事をせずにさぼっていたようなものだったんだから。




「………べつに、まだ何も言ってないじゃない。

少し息抜きにおしゃべりするくらい、私だっていちいちとがめたりしないわ」




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