ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「いやぁ、ほんと、相変わらずおきれいですね。

あなたのおかげで失恋の痛手も癒やされちゃいますよ」




まだ涙の浮いている目でへらへらと話しかけてくる男を、私は横目で観察する。




すっと通った鼻筋。


形の良い唇。


整った顔の造作に、少し垂れた甘い目許。



オーダーメイドらしいスーツは上質な生地で、すっきりとしたデザインが細身の身体によく似合っている。




………なるほど。


おモテになりそうな容姿をしていらっしゃる。



まぁ、男の上辺だけしか見ていないような、つまらない馬鹿女にはモテそう、ってことだけどね。




「そのカクテル、なんていうんですか?」




男が訊ねるので、私は面倒に思いながらも、「ジャック・ローズ」と答えた。



すると男はマスターに向かって、「ジャック・ローズふたつ」とオーダーする。






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