ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
男はどうやら太宰フリークらしいので、私の発言に気を悪くするかな、と思ったけど。




「君の、そういう大勢に媚びないところ、素敵だと思うよ」




なんて可笑しそうに笑った。



暖簾に腕押し、ということわざが頭に浮かぶ。


この男、何を言ってもへらへらとした態度を変えない。



ほんと、調子が狂うわ。




「とにかく、私は私の主張を変える気なんてないから。

恋なんて、ただのゲーム。

仕事に疲れて息抜きしたいときに、手近なところで一番条件の良い相手に目をつけて、私の魅力の虜にするの。

落とすまでの間が、最高のひまつぶし。

一人でご飯食べるのも味気ないな、ってときに気軽に声をかけられる相手を確保するためのゲーム。

………それでいいじゃない?」




私は唇をくっと上げて、蠱惑的な表情をつくり、華奢なカクテルグラスの足を指に絡めた。





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