ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
編集長の言葉に、私は苛立ちを隠せない。
本を出版したいと足掻いている、たくさんの才能ある『作家の卵』たちを、私は知っている。
運よく新人賞を受賞して、デビューできたっていうのに、出版社から急かされても作品を書かないなんて……。
なんて傲慢なやつなの?
「………そんな作家、放っておけばいいじゃないですか。
書く気のない作家に、用はないでしょ?」
冷たく言い放つと、編集長が苦い笑みを浮かべた。
「お前ならそう言うだろうと思ってたよ。
でも、な………」
編集長が伸びかけの無精髭をさすりながら、一瞬口を閉じて、そして、ひどく大事なことを言うように口を開いた。
「………朝比奈光太は、間違いなく、天才だよ。
何が何でも、書かせなきゃいけない」
私は意表を突かれ、口を噤んだ。
編集長が作家のことをこんなふうに言うのは、一度も聞いたことがなかったのだ。
『作家は俺たちの商売道具だ』と、臆面もなく言ってのけるような人なのに。
編集長にここまで言わせるなんてーーーいったいどんな小説を書くんだろう?
本を出版したいと足掻いている、たくさんの才能ある『作家の卵』たちを、私は知っている。
運よく新人賞を受賞して、デビューできたっていうのに、出版社から急かされても作品を書かないなんて……。
なんて傲慢なやつなの?
「………そんな作家、放っておけばいいじゃないですか。
書く気のない作家に、用はないでしょ?」
冷たく言い放つと、編集長が苦い笑みを浮かべた。
「お前ならそう言うだろうと思ってたよ。
でも、な………」
編集長が伸びかけの無精髭をさすりながら、一瞬口を閉じて、そして、ひどく大事なことを言うように口を開いた。
「………朝比奈光太は、間違いなく、天才だよ。
何が何でも、書かせなきゃいけない」
私は意表を突かれ、口を噤んだ。
編集長が作家のことをこんなふうに言うのは、一度も聞いたことがなかったのだ。
『作家は俺たちの商売道具だ』と、臆面もなく言ってのけるような人なのに。
編集長にここまで言わせるなんてーーーいったいどんな小説を書くんだろう?