ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
男は情けない捨て台詞………いや、負け犬の遠吠えとともに、乱暴な仕草で鞄とコートを引っつかんで去って行った。


どすどすと足音を立てる男を、客たちが失笑しながら見送っている。



………ふん。

まったく、最後までウザくて下品な恥ずかしい男。



ーーー悪女?

死ぬまで一人?



望むところよ。



私はそのへんの馬鹿女と違って、男に飼われたりしなくても、一人で生きていけるんだから。



ーーーあーあ、疲れた。



私はゆったりとした仕草で軽く首を回し、肩をすくめて、カウンターの中に声をかけた。




「………マスター。

ジャック・ローズちょうだい」




馬鹿男のせいで、すっかり酒がまずくなってしまった。


おいしいカクテルでも飲んで、お口直ししなきゃ。






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