ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「恋をしていない人生なんて、俺には考えられないよ。


恋をするからこそ心が揺れ動いて……。

例えば、カーテンの隙間から射す陽の光や、風に揺れる木の葉にさえ、心から感動することができるんだ。


恋をしなくなったら、俺はもう二度と小説を書けないと思う。

だから俺はいつでも恋を探しているんだ」




ーーーそういう作家の話は、聞いたことがないわけじゃない。



特に、恋愛小説を書く作家は、そういうことを言う人が多い。



だから、言いたいことが分からないわけじゃないんだけど。




………だからって、どうして、『君が俺の恋人になって』なんていう展開になるわけ?





「でも、俺を突き動かすほどの激情を、書かずにはいられなくさせるほどの衝動を与えてくれる恋にはなかなか出会えないんだ。

だから、『幻月の庭』を書き終えてからは、今まで何も書きたいものがなかった。

雑誌に載せた短編は、ずいぶん昔に………高校生のときに書いたものだったしね」




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